知人の商船三井への選考事例を紹介します。
海運産業という、馴染みのない領域ですが人気企業は多いです。事業会社とは一味違った観点で見られるので、シナリオ設計に一工夫が必要になります。
コツを抑えて選考に臨むためにも、本事例をぜひ参考にしてください。
中途採用フロー
STEP1
- 応募・適性検査
- 商船三井の公式HPや、各種転職エージェント経由で応募することができます。なお、基本的に募集は職種ごとに応募することとなります。
STEP2
- 書類選考
- 職務履歴書やレジュメを提出。それらに記載された過去の職歴や自己PRを基に、商船三井が書類選考をします。
STEP3
- 面接(一次・二次)
- 書類選考を通過したら、面接となります。面接は複数回実施され、2回程度とされています。
STEP4
- 内定・採用条件提示
- 無事、商船三井の面接を通過した場合、採用条件(業務内容・待遇)が提示されます。採用条件を受諾できた場合、正式に採用決定となります。
選考フロー自体は一般的なものですね。ケーススタディやグループ面接なども今回は確認できませんでした。
面接での立ち振る舞いで差別化していく形になるので、事例をもとに対策しましょう。
面接内容(特定を避けるため抽象化しています)
面接内容
おはようございます、本日はお越しいただきありがとうございます。今日は約1時間ほどお時間をいただいて、詳細なお話を伺いたいと思います。まずは、ご自身のこと、特にこれまでの職歴や主な業務内容について詳しく教えていただけますか?
おはようございます、こちらこそお時間をいただきありがとうございます。
私は27歳で、同志社大学経済学部を卒業後、損害保険業界に足を踏み入れました。新卒で入社した保険会社では、主に企業向けのリスク管理ソリューションを提供する部門に配属されました。
具体的には、クライアントの状況を分析し事業リスクを把握し、それを最小化するための保険プランをカスタマイズして提案する仕事です。
例えば、ある総合的な事業保険に加入していた中堅製造業の企業では、機械故障による生産停止リスクが高いという課題があったので、特定の機械部品の故障に特化した保険プランを提案し、年間で約1500万円の保険金支払いを削減する等です。
このように、顧客満足度の向上、会社の保険商品販売実績の両方に貢献することを意識し、営業をしてまいりました。
なるほど。
それでは、商船三井に応募された動機についてもう少し詳しく教えてください。
はい、商船三井に応募した最大の動機は、同社が持続可能な社会の実現に向けて非常に前向きな取り組みをしていることです。特に「BLUE ACTION 2035」プロジェクトにおける、環境への配慮と経済活動のバランスを重視したアプローチに深く共感しました。
また、私がこれまで損害保険業界で培った、リスク管理と顧客満足度向上の経験は、商船三井が直面する様々な課題、特に環境リスクの管理や顧客との長期的な関係構築において大いに役立つとも考えています。
例えば、私が損害保険会社で定常的におこなっていたことは、顧客からのフィードバックを定期的に収集し、そのデータを基にサービス改善を図ることです。
この取り組みにより、顧客満足度スコアは前年比で20%向上し、顧客からの信頼を大きく獲得することができました。
御社のサービス品質向上や、顧客との長期的な信頼関係構築に貢献できると考えています。
「BLUE ACTION 2035」への理解、ご自身の経験を活かした貢献のビジョンも持っていただきありがとうございます。
これまでのキャリアで最も誇りに思う実績について、具体的なエピソードを教えていただけますか?
もちろんです。
私が特に誇りに思っているのは、社内の新人向けトレーニングプログラムの改善に取り組んだプロジェクトです。
当時、新入社員の早期離職率が問題となっており、その主な原因の一つが効果的なトレーニングの欠如でした。そこで私は、実務に即したカリキュラムの開発に着手し、より実践的なトレーニングを実施することで、新入社員が直面する課題を解決する手助けをしました。
具体的には、保険基礎知識だけでなく、顧客との効果的なコミュニケーション方法や問題解決スキルに重点を置いたプログラムを導入しました。取り組みにより、所属していた組織の新入社員の離職率は前年比で30%減少、また参加した新人からは「実務に自信を持って臨めるようになった」との声が多数寄せられました。
プロジェクトを通じて、チームメンバーの育成と組織の成長に貢献できたことを大変誇りに思っています。
新人教育への取り組みが、組織全体のパフォーマンス向上につながったわけですね。営業面でなく幅広く成果を上げてるのですね。
次に、チームで働く上で最も重要だと思うことについて、ご自身の経験を踏まえてお話しいただけますか?
私がチームでの仕事をする上で最も重要だと考えるのは、透明性と相互理解です。
例えば、取り組んだクロスセルキャンペーンでは、複数部門のメンバーと密接に協力する必要がありました。
このプロジェクトでは、各部門の目標と期待を明確に共有し、定期的な進捗報告会を設けることで、全員がプロジェクトの全体像を理解し、互いの貢献を認識できるようにしました。
進捗の共有だけでなく、トピックスやナレッジの発信も頻繁に行うことで相互理解も深めることも心がけました。
透明性のあるコミュニケーションにより、プロジェクトは計画通りに進行し、目標のクロスセル率を10%向上させることができました。チーム内での相互理解と透明性が、高い成果を生み出す鍵だと強く感じています。
素晴らしい結果ですね。プロジェクト管理とチームワークの両方において、非常に有効なアプローチを取られたようです。海外での勤務経験や、海外で働くことへの意欲についてもお聞かせください。
学生時代に1年間、アメリカでの交換留学の経験があり、その時に多様性のあるコミュニケーションの重要性と魅力を深く理解しました。その経験から、異なる文化背景を持つ人々と協力し、共通の目標に向かって働くことに大きく魅力を感じています。
特に御社のようなグローバルな事業展開を行っている企業では、異文化理解と国際的なビジネススキルが重要だと思います。現時点でのビジネス経験はありませんが、海外での勤務を通じてグローバルな視野を広げ、様々な国や地域の顧客ニーズに応えることができるプロフェッショナルに成長したいと考えています。
また、留学経験で培った英語能力を生かし、海外のクライアントやパートナー企業との交渉やプロジェクト運営にも積極的に関わっていきたいと考えています。
海外留学の経験は、確かに価値がありますね。
では、特に興味がある分野や、商船三井で挑戦したいことがあれば教えてください。
特に興味があるのは、運航管理と事業企画の2つの分野です。
運航管理においては、私のリスク管理のスキルを活かして、船舶の安全運航と効率化に貢献できると考えています。例えば、リスクの分析を常に行ってきているのでその経験を活かし、運航中の潜在的な問題を予測し、事前に対策を講じることで、事故や遅延を減らすことに貢献できると思います。
事業企画に関しては、新しい市場における機会を探ること、今後の戦略の企画に関わりたいと考えています。特に、市場調査やデータ分析のスキルを生かし、新しいビジネスモデルの開発や環境に配慮した事業戦略の立案に貢献したいと考えています。
これらの分野での経験を通じて、御社のさらなる成長に貢献し、同時に私自身もグローバルなビジネスリーダーとしてのスキルを磨いていきたいです。
非常に具体的なご興味と目標をお持ちで、それが商船三井の事業とも合致しているようですね。
最後に、今後のキャリアで挑戦したいことや達成したい目標について、ご自身のビジョンをお聞かせください。
私のキャリアビジョンは、グローバルなビジネス環境で成長を実現するリーダーとなることです。
具体的には、今後10年の間に新興市場でのビジネス展開や、環境保護に配慮した事業戦略の立案に携わり、実際にそれらのプロジェクトを成功に導くことが目標です。
例えば、アフリカや南アメリカなど、まだ十分に開拓されていない市場において、御社のビジネスを展開しその地域の経済発展に貢献すること。また、CO2排出量の削減や、再生可能エネルギーの活用など、環境に配慮した事業戦略を立案し、実行することで、企業の持続可能な成長と社会貢献を実現したいと考えています。
多様なステークホルダーとの協力が不可欠になると考えますので、これまでの経験を活かして、異なる文化や背景を持つ人々と効果的に協働し、共通の目標に向かって取り組んでいきたいと思っています。
非常に野心的と感じましたが、明確なビジョンをお持ちですね。
私たち商船三井も、持続可能な成長と社会貢献を重視していますので、共感します。
今日は、貴重なお話をたくさん伺うことができ、本当にありがとうございました。何か他に質問はございますか?
はい、一つだけお伺いしたいのですが、商船三井では新入社員や異業種からの転職者に対して、どのような教育やサポート体制が整っていますか?
商船三井では、新入社員や異業種からの転職者に対して、包括的なオンボーディングプログラムを用意しています。
これには、業界知識や当社のビジネスモデルに関する基礎教育、実務に必要なスキルトレーニング、メンター制度による個別のサポートなどが含まれます。
また、定期的なキャリア開発の面談を通じて、個々のキャリア目標に合わせた支援を行っています。商船三井では、社員一人ひとりの成長とキャリアの成功を大切にしており、そのためのサポート体制には自信を持っています。
詳しく教えていただき、ありがとうございます。非常に心強いサポート体制を聞いて、さらに御社で働くことへの意欲が高まりました。
今日は本当にありがとうございました。フィードバックを楽しみにしております。
面接官:こちらこそ、今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。あなたの今後のキャリアにとって、商船三井が良いステージになることを願っています。フィードバックについては、後日改めてご連絡させていただきます。それでは、本日はお疲れさまでした。
終わっての感想と対策
いかがでしたでしょうか。的確な受け答えは十分にできていたと思います。面接の内容としては、「商船三井の事業や業務に対して、どれだけ理解しているか」といった内容が占める比率が多かったように思います。
スキルの深堀のシーンでも、いかに商船三井の事業に貢献できるか、という軸で話す必要があると思われます。
細かく振返ってみましょう。
面接を終えて、多くの点で良いパフォーマンスができたと満足していますが、いくつかの改善点も心当たりがあります。
コミュニケーション面とスキル面での振り返りを行いたいと思います。
コミュニケーション面
良かった点
改善点
コミュニケーションに関しては、おおむね問題なかったとように思います。仮説にはなりますが、「聞かねばならない質問」が面接官側で決まってるのではないかと思います。
それに適切に対応していければ、会話のキャッチボールや思考力の基準は、そこまで難しくなくクリアできるかと思います。
スキル面
良かった点
改善点
スキルの方が問われると思います。事業の特性上、リスクマネジメントに長けているというアピールは必要と思いいます。
今回は損保の経験から接続しやすかったですが、特に若年の場合はなかなか経験を積みにくい領域だと思いますので工夫が必要です。営業であれば、予算/目標達成のためにリスクになるようなことをどのような考えで潰していたか、商品企画であれば障害発生時など有事の対応をどのように設計していたか、など保守的な側面からエピソードを組み立てる必要がありそうです。
また、海運事業に携わっている人は限定的と思いますので、業界や事業に対する深耕は丁寧に行う必要があります。一般的な業界研究・企業研究に加えて、IRにのっているような中経や、広報サイトはチェックするようにしましょう。
総じて、この面接は自分自身のスキルと経験を振り返り、今後の成長に向けて何を強化すべきかを考える良い機会となりました。特にコミュニケーションとスキルの両面で、自分が強化すべき点が明確になったと感じています。
今回、結果としては一次面接は通過。二次面接は、ほぼ上記と同じ内容で臨んだ結果落ちてしまったそうです。
しかし、少しの期間ペンディングされたのちに「ほかの候補者との比較の結果」という形での見送りでしたので、いいところまでは行ったのではないかと思います。
個人的には、どれだけ戦力になれるかという視点でみたさいに、業界・事業理解と、そこへ貢献する具体的なシナリオが差分だったのではないかと考えます。
異業種かつ難易度の高い企業では、準備は大変になりますがその分リターンも得やすいので、企業理解をもとにしたストーリー設計を徹底しましょう。